マスク越しの笑顔と学校ソーシャルワーク

鈴木 庸裕(日本学校ソーシャルワーク学会代表理事・日本福祉大学)

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍により、先行き不透明な生活が続いている今,会員各位におかれましては,教育・福祉等の関係者や保護者とともにこの厳しい生活を乗り越えるため、日々ご尽力されていることと思います。
「長期にわたり友達と会えず一緒に遊べない。プリント学習ばかりでよくわからない、誰にも聞けない。一日屋内にいるとイライラしてくる。家にインターネット接続の環境がない。授業が始まっても教室には半分の友達だけ(分散登校)。友達とハイタッチもできない。国語の授業で音読をやらなくなった。部活動ができない。大会もなくなった」。これらは子どもたちの思いやSOSのほんの一部です。また、「学校休業や外出自粛、在宅勤務、三密予防により子どもや教師と会えない。家庭に出向けない。会議や研修会などが中止となった」など、年度初めの時期に、手探りでスタートし不安や苦悩を持った方々も少なくないと思います。
その一方で、「学校休業の中、何のために自分がいるのか。学校(教育)の機能と子どもの権利擁護とのつながりを根っこから問い直す」といった内省ができたという声もあります。「三密」、「ソーシャルディスタンス」という言葉が示すように、人と人との距離のあり方をつねに探求する私たちの専門性と創造性が大きく問われています。さらに、学校休業や経済活動の段階的解除の実相は、「ポスト・コロナ」を見すえた私たちの実践的研究的課題をも浮き彫りにしはじめているのではないかといえます。
本学会の目的(会則第3条)は、「学校ソーシャルワークに関する研究、会員相互の連絡と協力、内外の学会等との連携を図り、子どもの人権と教育及び発達の保障に資すること」です。このことに照らし合わせると、本学会には会員個々の専門職性や専門性の向上、子どもの命と暮らしを守る学校や専門機関、地域でのソーシャルワーク実践、そしてコロナ・ショックによる家族支援や雇用環境への諸施策にいたるまで、はばひろい研究と実践への発信が求められています。
感染拡大を被災という言葉に置き換えると、問題は被災時から始まるのではなく、それ以前から気づかれていなかった事象であり、そもそも社会的に脆弱さのあった局面が顕在化する。これらはこの四半世紀の甚大な災害のなかで幾度もくぐってきました。今日ほど、子どもたちの生きる権利と学習権のつながりが可視化された出来事はありません。社会からのこの気づきは、改めて学校ソーシャルワーク研究とスクールソーシャルワーカーの存在意義を希求しています。
災害による苦難の記憶は時が経つと忘れてしまう。しかし記録は残すことができる。この言葉は、今年度大会が延期となった熊本の玉名市歴史博物館に残る古文書の一節から得た知見です。今年度学会理事会では、早速、会員向けの「緊急アンケート」実施による学校休業および再開後の現状(記録)と課題の公表他、WEBを活用したオンライン研修やブロック活動、ホームページの活用促進、研究助成事業などを提案していきます。感染拡大の第2波、第3波は油断できません。これからの三密対応のなか、たとえ「マスク越し」であっても子どもたちの笑顔と向き合っていけるように。